そけい部ヘルニアとは?〜術式・体験談〜

休養

前回までは、鼠径部ヘルニアの概要と、原因について説明してきました。

今回は、鼠径部ヘルニアをどのように克服するのか、私自身の経験を含め、述べていきたいと思います。

鼠径部ヘルニアの対処法、術式

もし、鼠径部あたりに膨らみができ、それが鼠径部ヘルニアだった場合、そこから自然に症状が改善することはほぼほぼ無いと言われています。また、薬で治療する方法も現段階ではありません。痛みが無ければ、経過観察する場合もあるようですが、その後、手術をするケースが多いようです。したがって、外科手術のみが唯一の治療方法となっています。

昔は、組織同士を縫い合わせて穴を塞ぐ方法が行われていたみたいです。しかし、この方法だと、術後の痛みが強く、再び穴が空いてしまう事が多かったようです。

現在では、ポリプロピレン製のメッシュで穴を塞ぐ術式が多く採用されています。私自身が10年前に受けた手術もメッシュを使ったものでした。

手術のアプローチ方法:

・鼠径部切開法

こちらのアプローチは、鼠径部付近を4〜5cm切開し、メッシュで補強する方法です。これは私が10年前に経験したアプローチ方法で、手術中は下半身麻酔で意識がある状態で行います。手術時間は1時間かからないくらいで短く、体力が少ない高齢者に行われる事が多いようです。医療機関によっては、日帰り手術も可能であると言われていますが、経験談からして手術当日の帰宅はあまりお勧めできません。

・腹腔鏡手術

こちらは細い管のカメラとアームの様なものを用いて、ヘルニアの穴をメッシュで内側から補強する方法です。1cmほどの傷が3箇所できますが、術後の痛みが少なく、社会復帰が早く行えるといわれています。手術中は全身麻酔で、手術時間は2〜3時間程度かかります。手術時間が長いため、比較的体力のある若年層に行われるアプローチ方法と言われています。

鼠径部切開法の体験談

私が10年前に鼠径部ヘルニアの手術をした時は、ハタチ前後だったため、腹腔鏡手術の方が良かったのでは?と今では思いますが、おそらく私が受診した病院では鼠径部切開法しか採用されていなかったのだと思います。また、腹腔鏡を用いた術式も知らず、症状も限界に近かったので、他の病院を受診する余裕がなかったんだと思います。

手術当日、病院に行き、手術着に着替えて、午前中から手術を受けました。当初は日帰り手術の予定でした。

まずは手術台の上に横向きに寝て、麻酔を背中に打ちます。この麻酔、かなり太い針を奥まで刺すので、かなり痛かったのを覚えています。麻酔はすぐ効いてくるので、すぐ手術が始まります。私の場合は、しっかり麻酔が効いていてくれたおかげで、手術中は全く痛みはありませんでした。

麻酔は下半身麻酔だったため、意識はしっかりありますし、周りの音や声ははっきり聞こえる状態で手術が進んでいきます。今では笑い話ですが、執刀医が若い方で、サポートにもう一人医者がついていてくれたのですが、手術中に『違う違う!そこじゃないだろ!こっちだろ!』というやりとりが2、3回あり、内心ヒヤヒヤしていました笑。

手術が始まってからは、胸のあたりについたての様なものを置かれていたので、ほとんど周りは見えなかったのですが、周りには10人ぐらい人がいたようで、けっこうたわいもない世間話をされている方もいましたっけ笑。

手術は1時間で無事に終わり、ベッドに寝たまま、経過観察部屋みたいなところに移動しました。2時間ぐらい経ってから、看護師さんから、立てそうですか?と聞かれましたが、まだ全く足の感覚がなく、ベッドから動けない状態だったので、もう少し様子を見ることになりました。

また2時間後くらいに、看護師が様子を見にきてくれて、この時は一応立ち上がろうとしたのですが、生まれたての子鹿のように、全く足に力が入らず、支えなしでは自立できなかったので、この場で日帰りは厳しいということになり、1泊入院することになりました。

病室に移動し、痛み止めは飲んでいたのですが、その日の夜は、麻酔が抜けて、痛みが強くなり、ほとんど寝れませんでした。人生初めての手術と入院で不安もかなりありましたが、その都度看護師さんが様子を見にきてくれて、痛み止めを持ってきてくれたので、無事に乗り切れたのだと思います。

翌日の朝は麻酔の痺れはほとんどありませんでした。その代わり、痛みがかなり強く、足が全然動かせない状態でした。やっとのことで立ち上がり、松葉杖を使ってやっと歩ける状態でした。あー、こんなに痛いのに帰るのかー、と心の中で思いながら退院手続きをしました。看護師さんや医者の感じでは、もう1泊という雰囲気は全くありませんでした泣。

退院後、2週間くらいは歩くのに痛みが伴っていたと思います。痛み止めの飲み薬と、坐薬を使ってやっと歩いていた感じです。坐薬は初めて使ったので、服用するのも一苦労でしたが、かなり痛みを抑えてくれていたと思います。ほぼ痛みなく生活できるまでは1ヶ月くらいかかりました。

そんなこんなが、10年前に受けた鼠径部ヘルニアの切開法手術の体験談です。今、振り返ってみると、もし次があるなら、腹腔鏡術式にしたい、術後2泊以上入院したい、坐薬は使いたくない、と思います。

医療機関は選択できる時代なので、自分でも調べて、医療機関も調べて、納得いった上で受診することが大切ですね。そのためにも、自分の身体の異変に敏感になり、我慢せずになるべく早く受診する事がその後の選択の幅も広げるのだろうと思います。

最後に…

鼠径部ヘルニアってマイナーな病気じゃないの?周りにそれで手術した人聞いた事ない。と持っている人もいるかもしれません。確かに、若年層では珍しい症例かもしれません。しかし、鼠径部ヘルニアの手術件数は年間15万件(厚生労働省:第5回NDBオープンデータ)といわれています。その8割以上が男性で高年齢ほど発症しやすくなっています。男性の3人に1人は生涯で1回は発症する病気ともいわれています。明日は我が身と思って、今回の記事を頭の片隅にでも留めておいてもらえると幸いです。

参考文献・サイト

執行クリニックHP

大阪府済生会吹田病院HP

そけいヘルニアノート 〜鼠径部ヘルニア(脱腸)情報サイト〜

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